スウエーデンの面白いものたち


by nyfiken
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プルサーマル

プルサーマル 
百科事典ウィキペディア(Wikipedia)

プルサーマルとは、プルトニウムで燃料を作り、従来の熱中性子炉で燃料の一部として使うことを言う。なお、プルサーマルとは、プルトニウムのプルとサーマルニュートロン・リアクター(熱中性子炉)のサーマルを繋げた和製英語(plutonium thermal use)である。なお、軽水炉は熱中性子炉の一種である。

概要 名称の由来 [編集]もんじゅのような高速増殖炉では、高速中性子によってプルトニウムを核分裂させるが、プルサーマルでは通常の軽水炉と同様に熱中性子によってプルトニウムを核分裂させることから、このような名称が作られた(和製英語)。

通常の軽水炉との違い [編集]通常、軽水炉ではウラン235とウラン238を混合したウラン燃料(二酸化ウラン)を核分裂させることで熱エネルギーを生み出すが、ウラン238が中性子を吸収し2度のβ-崩壊を経てプルトニウム239が生成され、そのプルトニウム239自体も核分裂する。その結果、発電量全体に占めるプルトニウムによる発電量は平均約30%となる(プルサーマル発電を行なわない場合でも、運転中の軽水炉の中にはプルトニウムが存在し、ウラン同様に発電に利用されていることに注意)。それに対し、プルサーマルではMOX燃料と呼ばれるウラン238とプルトニウムの混合酸化物 (Mixed Oxide) を燃料として使用する。プルサーマルで使われるMOX燃料はプルトニウムの富化度(含有量)が4 - 9%であり、MOX燃料を1/3程度使用する場合、発電量全体に占めるプルトニウムによる発電量は平均50%強となる。

なお、高速増殖炉でもMOX燃料が使用されるが、プルトニウムの富化度は20%前後である[1]。

プルサーマル方式の利点と欠点
利点

原則として、従来の軽水炉のままで運用が可能である。
従って、高速増殖炉の実用化を待たずに、再処理された核燃料(プルトニウム)の消費が可能になる。
これにより、資源の有効利用が図られるだけでなく、エネルギー自給率を高めることができる。さらに、余剰のプルトニウムを持たないという国際公約を守ることができる。

プルサーマル方式そのものについてでは無いが、再処理をするということは使用済み燃料からウランを回収するということであって、ワンススルー方式に比べ高レベル放射性廃棄物の量が大幅に減る。

放射能の量が減るわけではないし、ガラス固化体の取り扱いは大変(20年間常時監視、その後深地層処分が必要)だが、輸送や処分場の規模を1/10程に抑えることができる[2]。
欠点
しかし、プルサーマル方式は、元々ウラン燃料を前提とした軽水炉でプルトニウムを(一部)燃やすこともあり、経済的な課題のほか、技術的に見て課題点が多い。

再処理に関わる部分 軽水炉からの高レベル核廃棄物をそのままガラス固化させる場合と比べ、事故が発生する可能性が飛躍的に高まる。

再処理によって核廃棄物は却って増える(一般的な資源のリサイクルと異なる点)。
冷戦終結後、ウラン資源の需給は安定しており、再処理で製造したMOX燃料では経済的に引き合わない状態になっている(つまり、プルサーマル計画自体が不経済)。
再処理を行なうと核燃料の高次化が進むため、最大でも2サイクルまでしか行なえない(高速増殖炉の場合はこの問題は発生しにくい)[3]。
これに対し原子力関係者は使用済み燃料の発生量や再処理工場の能力などから1サイクル目が終わるのは来世紀などと考え、向き合うことを避けている。 再処理を行っても、利用できるのは使用済み核燃料のうち1 - 2%を占めるプルトニウムのみで、燃え残りウランは高速増殖炉のメドが立っていない現在、利用するアテがない。 MOX燃料の軽水炉での燃焼に関わる部分

高速増殖炉と比べて燃焼中に核燃料の高次化が進みやすく、特にアメリシウム241が生成されやすくなる。核燃料の高次化が進むと反応が阻害され、臨界に達しなくなってしまい、核燃料として使用できなくなる。
上記と関連し、事故が発生した場合には従来の軽水炉よりプルトニウム・アメリシウム・キュリウムなどの超ウラン元素の放出量が多くなり、被曝線量が大きくなると予測される。 子炉の運転や停止を行う制御棒やホウ酸の効きが低下する[4]。 燃え方にムラが生じ、よく燃えるところの燃料棒が加熱・破損しやすくなる。もっとも、これは現行の方式ではコストを下げるために一部の燃料棒のみにMOX燃料を入れるから起きる現象で、コスト面を犠牲にして全燃料棒にMOX燃料を入れるように変更すれば回避できる。
水蒸気管破断のようなPWRの冷却水温度が低下する事故や、給水制御弁の故障のようなBWRの炉内圧力が上昇する事故が発生した場合において、出力上昇速度がより速く、出力がより高くなる(燃料体の設計および原子炉内での配置を工夫することによって対処が可能[4])。
MOX燃料そのものの持つ危険性
詳細は「MOX燃料」を参照

日本国外での動向 [編集]冷戦の終結と、ソビエト連邦の崩壊によって核兵器の解体が進んでいるため、世界的なプルトニウムの剰余が核不拡散の観点から問題になっている。一方で、プルトニウム利用の主流である高速増殖炉については、各国で計画の中止や遅延が相次いでおり、プルトニウム処理の有効な方法として、プルサーマルを捉える向きもある。ヨーロッパでのプルサーマルの実績は長く、1963年に開始したベルギーを始めとして、イタリアやドイツでは1960年代からの経験がある。また、オランダやスウェーデンでも行われたことがある。ただしドイツ・スイス・ベルギーでは抽出済みのプルトニウム在庫を燃やしたらプルサーマルは終了とされており、今後も再処理を行ってプルトニウムを抽出し、積極的にプルサーマルを続けようとしているのはフランスだけとなっている。アメリカ合衆国では1960年代にプルサーマルが始められたが、20年間ほど中断が続いた。その後、2005年6月からカトーバ1号機でMOX燃料の試験運転が開始され、同年10月にはエネルギー省所有のサバンナリバーサイトで解体核用のMOX燃料加工工場の建設が開始された。また同年11月には、これとは別に使用済燃料再処理・MOX加工・廃液ガラス固化・中間貯蔵を目的とした複合リサイクル施設建設の予算が議会を通過、承認された。こちらは2007年までに建設場所を選定し、2010年までに着工する予定となっている。

2006年には、アメリカが国際原子力パートナーシップを発表し、日本を含む国際協力による高速炉を用いた核燃料サイクルの実施計画が開始された。

日本国内での動向 この節は現在進行中の事象を扱っています。記事の内容は最新の情報を反映していない可能性があります。

日本においてプルサーマル計画が注目を集めたのは、もんじゅの事故により高速増殖炉の開発の見通しが立たなくなったことがきっかけである。日本においても、プルサーマルの開始に向けて国による安全審査や地元の事前了解が進んでいたが、住民投票による反対(新潟県)などにより、計画は遅れていた。他の反対の事例としては、福島県知事(当時)の佐藤栄佐久が発電所地元の意向はともかく、県全体の安全上の観点や県民多数派の支持を背景に強く反対してきた、といったことがある。

一方で、2006年(平成18年)3月に、九州電力の玄海原子力発電所3号機で実施したいという申し入れに、佐賀県知事の古川康は事前了解を出した。また2008年(平成20年)1月には、福井県知事の西川一誠が高浜原子力発電所の3・4号機で、2010年(平成22年)までにプルサーマル発電を実施する計画に事前了解を、静岡県知事の石川嘉延が浜岡原子力発電所でのプルサーマル発電に事前了解を出す[5]など、実施に向かって進んでいるところもあった[6]。

しかし今後、地元の同意がどこまで得られるかは疑問である。2010年8月、東京電力が福島第一原子力発電所3号機(大熊町)で計画していたプルサーマル導入について、佐藤雄平知事は受け入れを決定。「核燃料リサイクル交付金」計60億円が福島県に交付された[7]。 ところが2011年3月11日の2011年東北地方太平洋沖地震により、同原発は国際原子力事象評価尺度5の大事故を起こした[8]。周辺住民は食料さえままならぬ退避生活を強いられ、東京電力社長清水正孝の謝罪訪問を現知事すら拒否する、という事態になっている。

プルサーマル発電での営業運転中の原子炉 九州電力 玄海原子力発電所3号機 2009年(平成21年)11月5日より試運転開始。同年12月2日より、営業運転を開始[9]。
四国電力 伊方原子力発電所3号機 2010年(平成22年)3月2日より試運転開始。同年3月30日より、営業運転を開始[10]。
関西電力 高浜原子力発電所3号機 2010年(平成22年)12月25日より試運転開始。2011年(平成23年)1月21日より、営業運転を開始[11]。
現在までに事前合意が成立しているプルサーマル発電計画 [編集]中部電力 浜岡原子力発電所4号機 2012年(平成24年)3月以降に導入予定。
関西電力 高浜原子力発電所4号機 2011年(平成23年)夏から導入予定。
中国電力 島根原子力発電所2号機
北海道電力 泊原子力発電所3号機
東北電力 女川原子力発電所3号機 2015年(平成27年)度までに導入予定。
現在計画中のプルサーマル発電計画 電源開発 大間原子力発電所1号機 2014年(平成26年)度に運転開始予定。(建設中) プルサーマル計画の進捗状況 [編集]プルサーマル計画は、核燃料の検査データ不正や原発事故により、当初計画が10年以上遅れている[12]。

1972年(昭和47年)6月1日 国の原子力開発利用長期計画において、プルサーマル実施を明記。
1986年(昭和61年) 日本原子力発電が敦賀原発1号機で、関西電力が美浜原発1号機で、それぞれ少数体のMOX燃料の健全性を確認する試験を1995年(平成7年)まで実施。
1994年(平成6年)6月24日 原子力開発利用長期計画で、1990年代後半からのプルサーマル本格実施を計画。
1997年(平成9年)2月4日 プルサーマルを含めた核燃料サイクルの推進について閣議了解。
1998年(平成10年)
2月23日 福井県および高浜町へ、高浜原発3・4号機でのプルサーマル実施について安全協定に基づく事前了解願いを提出。
5月8日 福井県および高浜町から、プルサーマル実施に関する原子炉設置変更許可申請の手続きを進めることを了承。
5月11日 通商産業省に原子炉設置変更許可を申請。
12月16日 通商産業省から高浜発電所での原子炉設置変更許可を取得。
1999年(平成11年)
6月17日 福井県および高浜町からプルサーマル実施について事前了解を取得。
7月21日 - 10月1日 高浜原発4号機用BNFL製MOX燃料をイギリスから輸送し高浜発電所へ搬入。
9月13日 BNFLで加工中の高浜原発3号機用MOX燃料に検査データ不正問題が判明(詳しくは原子力発電のウソ一覧を参照)。
12月16日 受け入れ済みの4号機用MOX燃料にも検査データ不正問題が判明。当該燃料の使用を中止。
2002年(平成14年)7月4日 - 9月18日 高浜原発4号機用BNFL製MOX燃料を高浜発電所からBNFLへ返送。
2003年(平成15年)10月23日 海外MOX燃料調達に関する品質保証活動の改善状況について、国、福井県、高浜町等に報告。
2004年(平成16年)
2月5日 海外MOX燃料調達に関する品質保証活動の改善状況について、原子力安全・保安院が評価・公表するとともに、原子力安全委員会に報告。
3月11日 原子力安全委員会が原子力安全・保安院の評価を妥当と判断。
3月20日 今後プルサーマル計画を進めていくことについて、福井県、高浜町が了承。
3月31日 MOX燃料製造に関する品質保証体制を確認する基本契約を、原子燃料工業およびコモックス社(フランス)と締結。
7月12日 原子燃料工業熊取事業所およびコモックス社メロックス工場に対する品質保証システム監査結果を国、福井県、高浜町等に報告。
8月9日 美浜原発3号機2次系配管破損事故が発生。プルサーマル計画の準備作業を休止。
2007年(平成19年)2月7日 美浜原発3号機の本格運転を再開。
2008年(平成20年)
1月30日 プルサーマル計画の準備作業を再開。
2月12日、18日 - 21日 原子燃料工業熊取事業所および、コモックス社メロックス工場に対する品質保証システム監査を再度実施。
3月14日、17日 同監査結果を国、福井県、高浜町等に報告。
3月31日 高浜原発3、4号機用MOX燃料16体の調達に関する本案約を原子燃料工業と締結。
10月16日 - 23日 原子燃料工業および、コモックス社メロックス工場に対して定期監査を実施。
11月10日 高浜原発3、4号機用MOX燃料調達に係る輸入燃料体検査申請を行なう。
11月21日 高浜原発3、4号機用MOX燃料32体の調達に関する契約を原子燃料工業と締結(2回目装荷用)。
2009年(平成21年)
1月30日 高浜原発3、4号機用MOX燃料の製造開始。
11月5日 玄海原発3号機のプルサーマル試運転開始。
12月2日 玄海原発3号機のプルサーマル営業運転開始。
2010年(平成22年)
3月2日 伊方原発3号機のプルサーマル試運転開始。
3月30日 伊方原発3号機のプルサーマル営業運転開始。
2010年(平成22年)
10月26日 福島第1原発3号機のプルサーマル営業運転開始[13]。
12月25日 高浜原発3号機のプルサーマル試験運転開始。
2011年(平成23年)
3月11日 2011年東北地方太平洋沖地震により、福島第1原発3号機が国際原子力事象評価尺度5から6の事故を起こす[14]。
関連項目 [編集] ポータル 原子力
原子核分裂
原子炉
放射性廃棄物
核燃料サイクル
英国原子力公社警察隊
原子力発電の事故隠し・データ改ざん一覧
福島第一原子力発電所事故
脚注 [編集]^ 原子炉とプルトニウム 原子力・エネルギー教育支援情報提供サイト[リンク切れ]
^ 原子燃料サイクルの利点 電気事業連合会
^ 舘野淳. “労多くして益少なし―不必要な「プルサーマル」,「プルサーマルを考える対話フォーラム」講演資料,2009.10.” (PDF).
^ a b 軽水炉用MOX(プルサーマル)燃料 (02-08-04-02)
^ 浜岡原発プルサーマル、静岡県が正式受け入れ表明[リンク切れ]
^ プルサーマル計画:高浜原発で3年半ぶりに再開 関西電力[リンク切れ]
^ しかし前知事の佐藤栄佐久によれば、県議会でも安全性に関する議論らしい議論は無かったという。佐藤栄佐久元福島県知事 緊急インタビュー
^ 6に引き上げられる可能性あり。
^ 九電 プルサーマル営業運転開始 核燃料サイクル確立へ前進[リンク切れ]
^ 伊方発電所3号機におけるプルサーマル開始について
^ 高浜発電所3号機の本格運転再開について
^ 関西電力「>当社プルサーマル計画の経緯について 」
^ プレスリリース 福島第一原子力発電所3号機におけるプルサーマル開始について
^ 解決の見込みは立たず、放射性物質の拡散、首都圏での電力不足など、社会や経済に甚大な影響を与えている。
参考文献 [編集]
by nyfiken | 2011-04-03 09:56