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by nyfiken
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使用済核燃料中間貯蔵施設 rokkasho ,Aomori

「使用済核燃料中間貯蔵施設」INFO



2003年6月29日討論集会にて 美浜の会


1.「中間貯蔵施設」の2重性格、ますます浮上する永久貯蔵の道

(1)2重の性格
(a) 中間貯蔵施設とは、原発の使用済燃料を再処理施設に運ぶまでの間「中間的に」貯蔵する施設(使用済燃料を資源として再利用する方式)という建前。
注:関電は第二再処理工場に運ぶとホームページで表明。ところが国の長期計画(2000.12)では、「(建設計画は)六ヶ所再処理工場の建設、運転実績、今後の研究開発及び中間貯蔵の進展状況、高速増殖炉の実用化の見通しなどを総合的に勘案して決定されることが重要であり、現在これらの進展状況を展望すれば、2010年頃から検討が開始されることが適当である」となっている。中間貯蔵施設は2010年までに操業開始予定としていることと矛盾している。

(b) 他方、再処理路線が困難な中で、使用済燃料は再処理せずにそのまま貯蔵すべきだという方向(ワンススルー方式)が一層現実味を帯びてきた。自民党の「エネルギー総合政策小委員会」が「政策転換」を表明した(毎日新聞5.23)。6月21日付朝日新聞社説が典型。

★ワンススルー論議の背景に、再処理の財源が9兆円も不足していることがある。この際「官民の役割分担」と称して中間貯蔵にまで税金負担を求める動きがある。

(2)問題の焦点は永久貯蔵
(a) 現在は、原発と核燃料サイクルをめぐって流動的な状況にある―プルサーマルの停滞、六ヶ所再処理工場の行方の不透明、核のゴミ処理の不確かさ、それに加えて東電の不祥事による原発の停止。この中で、中間貯蔵施設の「中間」という建前が通る見込みはまったくなく、永久貯蔵しかないことは明らか。

(b) 問題の焦点は、中間貯蔵施設=永久のゴミ捨て場という点。むつ市での経過がこれを如実に示している。危険性も主にこの性格との関連で問題になるだろう。

2.「中間貯蔵施設」に関する東電の構想とむつ市での動き―後の(付記)参照
(a) 50年後にどこに運びだすかという問題が、実際に焦点となっている。これについて東電の説明は揺れ動き、何もないに等しいことは明らか。

(b) それにもかかわらず、むつ市と商工会はさまざまな経済的思惑から、電力と政府は使用済燃料をめぐる現在の行き詰まり状況から、建設を極端に急いでいる。

(c) ついに6月26日の市議会で市長は誘致を表明。市民運動は30日から住民投票請求署名開始。

3.関電の「中間貯蔵施設」の構想―交渉で表明
(a) 福井県を除く複数地点が候補。その中に御坊市は入っていないが、永久に入らないというわけではない(それにしては、小浜市と御坊市で誘致の動きが活発?)。
(b) 規模は3000~5000tU。2010年までになるべく早く操業開始したい。建設には3年程度かかるので、ここ1~2年中に決定。
(c) キャスクは金属製だけでなくコンクリート製も候補で、どちらにするか検討中(注:キャスクの重さは金属製で約100~120㌧、コンクリート製で約150㌧程度)。
(d) 約50年後に運び出す先が、六ヶ所再処理工場か第二再処理工場かは未定。現行規定では、キャスクの中身を目視検査しなければならないが、それはできないので、運び出すことはできないと関電は簡単に認めた。中間貯蔵は政府の方針なのでなんとかしてくれるはずだという。
(e) 50年後にどの原発が動いているか? に対し、 いろいろな機器・設備の取り替えも可能だから・・・という。しかし、今後の供給計画は10年後までしかないとのこと。

4.中間貯蔵施設の問題点
(1)とほうもなく膨大な放射能の貯蔵
(a) 仮に3000㌧貯蔵される場合、100万kWクラスの原発約30機以上分の燃料に相当。キャスク数ではおよそ340基程度になると予想(1基に燃料集合体20体収納のとき)。
(b) 100万kW原発では1日に広島原爆約5発分のウランが核分裂し、それだけの死の灰(核分裂生成物)と、別にプルトニウムなど寿命の長い超ウラン放射能をつくる(原爆では後者なし)。
(c) 燃料は原発内で約3年間燃えるので、原発1機分のウランは取り出されるまでにおよそ広島原爆5千発分の死の灰をつくる。そのうち使用済燃料には、比較的寿命の長い放射能が残る(例えばセシウム137やストロンチウム90は半減期が約30年なので十分残る)。
(d) 30機分だと、これら長寿命の放射能が、広島原爆15万発分程度貯蔵されることになる。

(2)4つの危険性
(a) 放射線放射⇒遮蔽―――キャスクと壁;規制値:表面から1mで0.1mSv/時→876mSv/年
(b) 発熱⇒除熱―――自然対流の空冷
(c) 臨界の危険⇒臨界防止―――乾式、ラックで隔てる
(d) 内部放射能の漏洩、放出⇒閉じこめ機能―――キャスクの健全性を約50年間は保証

★1これらの危険性に対して実際に安全が保たれているかどうか(とくに長期間にわたって)は検証はされない。2重蓋はけっして開けないことになっている。

★2それに替わって、原発サイト内においたサンプルだけで確認する方法をとるよう、指針を作成した専門委員会から安全委員会に要望が出されているだけ(その専門委員会は安全委員会がつくったもの)。

★3地震に対しては、建屋が壊れない保証は最初からないものとされている。原発と違って岩盤上への建設は求めていない。建物が壊れると除熱できないが、3日以内に掘り出されれば大丈夫。基本的にはキャスクによって安全が保たれるはずだという。

(3)50年後に施設から運び出す保証も見込みもまったくない
(a) 運び出す先がない―――東電の説明から明らか。

(b) 50年後に原発が動いている見込みがないどころか、再処理工場が動いている見込みもない。六ヶ所再処理工場の耐用年数は30年程度だと日本原燃は表明。

(c) 内容物の目視検査ができないので、(仮に運び出す先があっても)現行法規では運び出せない。サンプル検査だけで許すというまったく無謀な企てが語られている(最後の資料参照)。

⇒中間貯蔵施設が永久の放射能貯蔵所であることはまったく明らかなこと。そのような長期にわたって放射能が外部に出ないような保証はまったく考慮されていない(指針でも、安全性の保証は50年程度に限定されている)。

5.再処理の見込み不透明と「中間貯蔵施設」の「必要性」
(1) 使用済燃料が原発サイトにあふれる状況
(a) 高浜原発の現行では、六ヶ所再処理工場への搬出ができないとき、2~3回分の燃料取り出しでプールが満杯になるが、今年の秋からリラッキング(ぎゅうぎゅう詰め)で容量を増やそうとしている。美浜原発では5回程度、大飯原発では8回程度で満杯。

(b) 全国的には、再処理工場が予定どおり動けば30年程度の余裕はあるが、動かなければ2010年ごろにサイトのプールは満杯になる。逆に、2010年をメドにするのは再処理工場が動かない場合を想定しているからか?

(2)六ヶ所再処理工場の困難
(a) プルサーマル停止による再処理目的の喪失

(b) プールの不正溶接・水漏れ、パイプの不正パッキング・薬品漏れ、使用済み燃料搬入は昨年12月より停止状況でいつ解除されるか見込みなし。これらのため、設計段階にまでさかのぼった全面的点検までをも行うとしている

(c) 再処理の財源が9兆円も不足という電事連の試算。電力自由化のもとで財政負担は大。

(d) 再処理工場の特別な危険性―イギリス・フランスへの風当たりが国際的に強まっている。


 ⇒近い将来に使用済燃料の行き場がなくなりかねないという状況がある。そうなると、再処理の見込みが立たない中では、原発が停止しかねないという状況が訪れる。この危機感から、中間貯蔵施設の建設が急がれている。

★中間貯蔵施設の建設を急いでいること自体が、事実として、これまでになかったような原発のせっぱ詰まった状況を如実に示している。

6.「中間貯蔵施設」促進の意見とその批判
(1)朝日新聞の社説(03.6.21)
「サイクルをどのように見直すにしろ、増え続ける使用済み燃料を数十年間置いておく中間貯蔵施設は早くつくるべきだ。安全性の問題も少なく、建設費も安い。
 再処理工場は、本格的な試験運転が始まれば放射能で強く汚染され、維持費も将来の廃棄費用も格段に高くなってしまう」。

★この社説では、「資料済み燃料を数十年間置いておく中間貯蔵施設」がいきなり登場するが、その役割や性格、数十年の貯蔵後にどうなるかといった面が何も規定されていない。

(2)批判
(a) 使用済燃料の行き場がないという現在の新たな状況は、無計画に原発を増設してきたツケ。中間貯蔵施設はそのような無計画・無責任路線を救うものである。これを許せば、原発の運転継続によりますます核のゴミがあふれ、住民・国民を核のゴミの泥沼へと導く。中間貯蔵を認めることは、核のゴミの発生が続くのを認めること。中間貯蔵を認めるか否かが、いままさに、反対運動にとっての試金石になっているとも言えるのでは(どこにつくるかというような問題以前の問題)。

(b) 逆に「中間貯蔵施設」の建設を阻止することによって、原発の運転を停止させ、核のゴミの発生をとめる方向に向かうという現実的な条件が生まれる。

(c) 電力自由化の中で経済性最優先の原子力政策。再処理よりはむしろ、安上がりの使用済み燃料対策をとること、それが「中間貯蔵施設」。

(d) 原発自体にも老朽化の危険が迫っている。BWRのシュラウド問題は、原発停止以外に解決のしようがないことは明らか。関電のPWRでも炉の底から挿入されている管にまでひび割れが発生している。これに対してひび割れがあっても運転を許すという「維持基準」をつくろうとしている。これに対置するのは原発停止以外にない。

(e) 再処理にも、中間貯蔵施設の建設にも反対すること。現在停止中の東電原発の運転再開に反対し、さらに停止の範囲を拡大することが重要。それによって、核のゴミの発生を止め、放射能によって現在と将来の人類が今以上に被ばくすることを何とかくい止めることができる。


(付記)東電の「リサイクル燃料備蓄センター」事業構想(H15.4.11)

◆ 貯蔵量:5000~6000tU。まず3000tU規模を1棟、その後2棟目(東電構想03.4.11発表)

◆ 事業開始:2010年までに;建設期間は1棟あたり3年程度(注:「建設期間」とは申請から操業開始までか?)

◆ 貯蔵期間:施設ごとの使用期間は50年間、キャスクごとでも最長50年間(東電構想4.11)

◆ 貯蔵後搬出先:
・「国の計画では2010年から第二再処理工場の建設を検討している。第二再処理工場ができるまでの間の量について中間貯蔵施設が欲しい」(2001年5月の住民説明会で東電:東奥日報4.21)
・「操業開始後40年目までに、貯蔵キャスクの搬出についてご協議させていただきたい」(東電の構想4.11発表)
・「いまのところ確たる計画をもっていない。いずれ立地される他県の中間貯蔵施設への搬出も選択肢の一つ」(東奥日報4.12)
・「六ヶ所再処理工場が動いていれば同工場に優先して搬出するし、第二再処理工場ができていれば同工場に持っていく」(東奥日報4.20)
・「許認可上、国からも再処理工場に持っていくことを約束させられるだろう。六ヶ所工場への搬入順位は、原発から出た使用済み核燃料より、むつに貯めた使用済み核燃料の方を優先する」と、東電はむつ市の諮問機関で説明。しかし、再処理工場を建設中の日本原燃は「工場の操業期間を明確に決めているわけではないが、機器の耐用年数などから三十年くらいではないか」と同じ場で説明(東奥日報5.1)

◆ 経済効果:
・事業費:約1千億円(建屋2棟の建設費=2百~3百億円、残りはキャスク費用)。
雇用は警備員も含めて20~30人程度(東奥日報4.12)
・建設期間中の雇用は1日平均約150人で、地元からの雇用、工事発注に努める(デーリー東北4.12)(注:建設期間とは上記の3年間のことか?不明)
・電源三法交付金:市長は貯蔵期間50年で総額1千億円、固定資産税は年平均1億円と説明(デーリー東北4.29)―――注:これまで市長は「国の試算では約320億円」と説明していた。

◆ むつ市が審議を急ぐ理由:
・「東電の不祥事で原発が停止し、プルサーマルも先送りされ、中間貯蔵を急がなければならないーという意味が裏にある。市は市で赤字再建団体への転落防止という事情を抱えている」(東奥日報4.29)
・「(会議を急いでいないかとの質問に市長は)市財政の厳しさや中間貯蔵施設の必要性を強調し、『(国や事業者から)急いでほしいとの要請もある。急いでやった方が有効な結果が得られるとの共通した事情がある』と述べた」(デーリー東北4.29)

◆ 最近の状況:6月26日の市議会で、杉山むつ市長が中間貯蔵施設の誘致を表明。市民運動"核の「中間貯蔵施設」はいらない下北の会"は、知事選終了後の6月30日から、住民投票請求の署名運動を開始。


(資料:審査指針「別紙」)
使用済燃料中間貯蔵施設における金属製乾式キャスクとその収納物の長期健全性について
                        平成14年7月10日 原子力安全委員会 原子力安全基準専門部会
 「金属製乾式キャスクを用いる使用済燃料中間貯蔵施設のための安全審査指針」(以下、中間貯蔵施設指針という)の調査審議にあたって念頭においた使用済燃料中間貯蔵施設(以下、中間貯蔵施設という)では、輸送・貯蔵兼用の金属製乾式キャスク(以下、金属キャスクという)により、使用済燃料を詰め替えずに40~60年程度貯蔵することとしている。金属キャスク及び収納物の長期貯蔵に係る健全性を確保するために、本指針においては、金属キャスクの構成部材は長期間にわたり性能を維持できる設計であること、収納物は不活性ガスとともに封入されること、燃料被覆管は累積クリープ歪みによりその健全性を損なわないよう適切に除熱されること等を要求している。これらの要求に加え、金属キャスクが極めて静的に貯蔵されること、また、金属キャスクの蓋部の閉じ込め機能について、貯蔵期間中の監視とともに、異常が生じた場合の蓋の追加装着等、修復性に関する考慮を求めていることから、設計貯蔵期間を通じた貯蔵施設としての安全性は確保されると考える。
 貯蔵終了後の輸送の安全性を確認する観点からは、中間貯蔵施設内において、輸送前に金属キャスクの蓋を開放し、収納物、バスケットの状態を目視により確認する、あるいは金属キャスク内雰囲気の検査を行うことにより、金属キャスクや収納物の健全性を確認することが考えられる。しかし、これらの行為は、金属キャスクの閉じ込め境界を破ることになり、作業員の被ばく低減や放射性物質の漏えい防止の観点から望ましくないばかりか、新たな事故の発生の原因ともなり、リスクの増大につながる。こうした観点から、今般とりまとめた中間貯蔵施設指針では、金属キャスクの蓋を開放するための設備等は要求していない。従って、輸送の安全性を確認するための発送前検査においては、上述の目視確認等ではなく他の方法を採ることが必要となるが、この点につき、当専門部会は、金属キャスクを用いた使用済燃料の長期貯蔵の実績が少ないことに鑑み、発電所施設内での乾式金属キャスクを用いた貯蔵の状況の調査等により、設計貯蔵期間にわたる金属キャスクや収納物の健全性に関する知見の蓄積を図ることが必要と考える。蓄積された知見から、輸送中の安全確保も考慮した金属キャスクや収納物の長期健全性が確認されれば、発電所からの搬出の際に詳細に確認された輸送物としての安全性がその後の長期貯蔵期間中においても維持されると判断できる。よって、前述した発送前検査の内容は、貯蔵中の金属キャスクの監視データ等の確認で代替できると考える。
 当専門部会は、以上述べた発送前検査の代替の考え方及びその前提となる金属キャスクや収納物の長期健全性に関する知見の蓄積方法について、原子力安全委員会において検討されることを希望するものである。
                                                (下線は引用者による)
by nyfiken | 2011-04-03 10:10