スウエーデンの面白いものたち


by nyfiken
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

スウェーデン新作映画 ”VARG"(WOLF、おおかみ)

スウェーデン映画の新作”VARG"おおかみを観る。ストックホルムの映画館は、ほぼ満員だった。スウェーデン語のみ。英語字幕なし。北ヨーロッパ北欧の大地の自然が、映し出される。美しい映画は、オーロラがゆうめいなサミ族の住む壮大な北の森や山が舞台となる。


アメリカ在住ハリウッド映画でおなじみのスウェーデン人俳優、PETER STORMAREピーターストルマーレが、主役を演じている。バールマン率いる舞台で活躍した。日本にも滞在し、数々の舞台を。その後渡米。特徴あるキャラクターで人気がある。グレタガルボ、イングリッドバークマンなど世界に名の知れたスウェーデン人女優にならぶ、スウェーデンを代表する俳優である。静けさとシンプルな生活が好きとインタビューで答えている。奥様は、日本人女性。


映画を観ていて、途中から、うーんと深く考えさせられてしまった。

スウェーデンで、動物保護。狼などの野生動物の狩猟を禁じる法律がある。犯罪として罰せられる。北部スウェーデンの大地に暮らすサミ族の人々。しかの放牧により収入を生活の糧として生きてきた。しかの天敵が狼である。最近、スウェーデンの森には野生の狼が戻ってきている。オオカミが、厳しい弱肉強食の中、生きのびるために、サミ族のしかを殺す。。問題点が映画によってうきぼりにされる。森の中の野生狼とサミ族との溝。法の強さ。デイレンマ。。ふたをあけると、実際物事は単純ではない。


雪の大地をシカが走る壮大なシーン。サミ族(サンタクロースやオーロラの本場)の主人公が雪上スクーターを自由自在に操る。雪の上を水上ボートみたいに自由に。みている観客は、北のひろびろとした真っ白な雪の大地を気持ちよくダイナミックに走っているような錯覚におちいる。爽快感がある。カメラワークがいい。誰もが思うこと。雪上そりにのって、星空をみて、オーロラをみてみたーい。一生に一度でも。本物のオーロラをみたい。と熱望する。


この映画を観る前の私の気持ち。誰もが思う森の動物を殺すのはいけない。不法な狩猟は当然、厳しく取り締るべきだ。では、サミ族のしかを襲うおおかみはどうしたらいいの?自然の中の動物は、生きるか死ぬかの厳しい世界。森の中の狼にスウェーデン政府がえさをあげるわけにもいかない。えさをあげたら、おおかみはもっと増える。他の弱い動物を襲うだろう。動物は、過去、長い間自然の法則と戦いの中で生き延びてきた。数をふやしたり、そのつどバランスを保ってきた。どうしたらいいのだろう。増えすぎたカンガルーの話も思い出す。生物の生態系のバランス。でも人間は、むやみに動物を殺すことは、戒められなければならない。矛盾。



俳優Peter が母親と一緒に暮らす男やもめの役を見事に演じている。サミ族出身の主役の男性の役は、役者にぴったりあっている。別れた妻の間にできた高校生の男の子。スウェーデンによくある話だ。再婚した母親は、宿屋と食事ができる小さな村のホテルを新しい夫ときりもりしている。息子は、母親と義父と一緒に住んで学校へ通う。時々実父を訪れる。父が山の上にある小屋へ見張りのため泊まり込む。放牧している鹿が、何者かに襲われ、倒れている。苦しむしかをみていられず銃で殺し涙を流す。夜通し見張りをする父といっしょに、山の上へ。一晩中テントを張り、何ものによっておそわれたのか、見張りをする父親。息子は一緒に、学校を休んで父と行動を共にする。山の森のうえでも、携帯電話がつかえるスウェーデンのテクノロジー。サミ族の住む森や山の上でも携帯が使える今のスウェーデンの様子もわかっておもしろい。



倒れて息もたえだえの、シカが倒れた場所。遠くに狼の姿をみつけ、狼を追っていく。狼は、ハスキー犬に似ている。逃げる狼は、川に落ち、はい上がっていこうとしたときに、むすこが、怒りのあまり殺してしまう。そこから、物語は大きく展開していく。



スウェーデンでは、おおかみや野生の森の動物を殺した場合、警察の捜査で、見つかった場合裁判にかけられる。その背景には、動物を狩りのスポーツとして森で狩猟を楽しむ人や不当な狩りが行われている背景がある。12ヶ月の実刑。20000クローネの罰金。厳しい法律である。父親は、裁判で自らの罪として、息子をかばい、留置所にはいった。留置所の中で、製材作業をしているのが、森のスウェーデンらしい。



放牧が、収入源というサミ族の伝統。自然のバランスのくずれ。長い歴史のなかで動物は互いに闘い、バランスは、人為的影響をうけたりしてきた。強いものが闘いによって残った。生活の糧がおびやかされる部族の人たちのことを考えると、単純ではない。伝統的な生活、現在の置かれた状況、感情や立場をどういうふうに考えたらいいのか。

刑務所に父を訪れた息子と別れた妻、老いた母親。誰よりもかわいがっている愛犬も一緒。

自分が連れて行ったために、罪をおかしてしまった息子をかばう父。むすこの代わりに刑に服する父。両親が離婚しても実の父のことを哀しく思う息子。息子を愛する母親。年をとってもやもめの息子の世話をし、食事を作り、愛する老いた母。スウェーデンの愛のいろいろな形がみえてくる。社会の価値観や法律で変えざる終えない部族の人々伝統。新しい社会と価値観下に、サミ族の置かれている状況。人々のとまどいが伝わってくる。いつか村を捨てて、首都に出稼ぎにくるしかないのだろうか。サミ族、雪上そりの代わりに、都会のバスの運転をする生活が将来待ちうけているのだろうか。


この映画の英語での簡単な説明がある。

VARG(WOLF、おおかみ)2008

Varg is directed by Daniel Affredson.
Peter stormare, Robin Lundberg, Rolf Degerlund.
An Examination of how the traditions of the Sami villagers in northern Sweden is confronted with modern day's society.
(www.imbd.com)

おおかみの映画は、ダニエルアフレドソン監督。主役ピーターストルマーレ、ロビンルンドべリエ、ロルフ デゲルルンド
北スウェーデンのサミ族の伝統社会が、現社会に直面する問題の試行などを描く。

スウェーデンの映画も日本で上映されるようになってきた。連休は、東京でスウェーデン映画が2本立てで上映されるという。スウェーデンの有名な子役がでているA SWEDISH LOVE STORY.この子役をみにいくだけでも、十分価値がある。またロック歌手に恋して。といった主題のもうひとつの映画は、スウェーデン映画によくみられる普段おとなしいスウェーデン人なのに、映画のなかでは、怒って大きな声でお互いどなりあう?シーンが随所みられる。アパートの中やキッチンなどいかにもスウェーデンらしい。おちが、”マスターもう一杯。””あしたが、あるよ。”このスウェーデンのオプテミズムは、いったいどこからくるのだろうか。実際、ひょうひょうとしたスウェーデン人のなかに見いだすことはさほど難しくない。
by nyfiken | 2008-04-13 10:01